ベルン。大切な言葉が声にならない。

 視線の先には、ベルンがいた。
 たった一人だけ、鳥に立ち向かう。
 何時だって綺麗だと思っていた氷の魔法。
 
 あの鳥は魔物なのか? だったら、立ち上がらなければ。戦わなければ。

 理性ではそう思っても動けない。不本意な感覚が体を支配する。

 ベルン。名前を呼べない。届かない。ベルン!

 その時ベルンが口笛を吹いた。すると観客席から、ワンピース姿の美しい女たちが下りて来た。ベルンの指示で剣を構え、美しい鳥に対峙する。

 どうして、動ける?
 ベルンとこの女たちだけどうして動けるんだ?

 鳥の歌声が鳴り響く頭の中で、考えようとしても考えられない。