「逃げたら解けてしまいますよ」
そう言えば、ベルンは俺を力の限りに突き飛ばした。
解けるリボン。乱れる髪も厭わずに逃げ出すほど。
手を伸ばして逃げられる。怯え切った瞳に心が痛む。
明らかな拒絶。ベルンは俺とわかっているのに、それでも触れることを許さなかった。許されなかった。
俺じゃ駄目なのか。
突きつけられた現実に、泣きたくなる。
逃げていくベルン。残されたリボン。
俺は、残されたリボンを指に巻き取り、その残り香にそっとキスをした。
この夜のことは誰にも秘密だ。
ベルンにも、秘密だ。
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