大魔道士ザントの夜会の警備を交代してほしいと頼まれ、俺は夏休みだというのに、急遽騎士の制服を着ていた。
 今夜の夜会は、王太子とマレーネ姫が出席するとのことで、近衛隊から警備員が数人配置されることになっていたのだ。


 俺は、屋敷の庭の影で警護をしていた。
 こういった場所は、夜会の席では逢引の場になりやすい。恋人たちの邪魔をしないようにと気を付けながら、周りを見回っていた。

 ふと目に入る、茶色に波打つ髪。
 
 俺が見間違えるはずもない、ベルンだ。