ビックリした。ビックリした。 女に見せる顔のフェルゼンを初めて見て、驚いた。 さすがに情熱の騎士といわれるだけある。気が付かなかったと言え、泥人形を口説くなんてどんだけのタラシなんだ。 バクバクと心臓がなって、指が震える。 ザントの引き籠り部屋に逃げ帰った。 「どうしたの? ベルンちゃん」 ザントが不思議そうな顔で私を見た。 「話しちゃった?」 「……一声もだしてない」 上がる息で答えれば、ザントが眉をしかめた。