【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「ふひっ、し、死ぬかと思った……」

 ザントが変な笑いかたで、ヘロヘロとしている。

「ボクは少し休むから、プッペは一人で適当に歩いてきて。失礼な客は逃げていい」

 ヒラヒラと手を振られて、私は会場に戻った。
 美味しそうなスイーツのタワーもあったし、ホスト側の人間(人形?)が居ないのもよくないと思ったからだ。
 どうせ、話が出来ないのだ。周りも話しかけてこないだろう。

 目立たないように戻ったつもりだったが、視線が急に集まって戸惑う。ご令嬢とはこんなに視線に晒されるもなのだろうか。
 宵闇の騎士も注目を集めるが、あれは私を見ているようで虚像を見ているのがわかるから、宵闇の騎士のふりをして受け流すけれど、こういう直接的に見られるのは慣れていない。