やがてマレーネ姫が、長兄の王太子とともに現れた。ザントがピシリと固まったから、背中をつつく。ザントはハッとして私を見た。
しっかりしろ、と目で合図を送る。ザントは深呼吸をして、マレーネ姫の前に立った。仕事用に切り替えたらしい。
視線はひたすら王太子を見ている。マレーネ姫のことは考えないようにしているようだ。
「これが、土人形かい?」
王太子が物珍しげ私を眺めた。
「美しいですわ……私も欲しいわ……」
マレーネ姫が呟いたので、ニッコリと笑って礼をした。
ふらつくザントの腕に腕を絡ませ、しっかりしろと引き立てる。
「これは余興でして。言葉も話せませんし、タイムリミットも短いので実用化は無理でしょう」
ザントは視線をそらしたまま、ようよう答えた。
これ以上はボロが出そうだと判断した私は、ザントの腕を引き、魔方陣のある場所をトントン叩いて見せた。
「ああ、もうタイムリミットのようです。少し魔法をかけ直してきます」
ザントはそう言うと、逃げるようにその場から離れた。



