ザントの屋敷に向かえば、使用人たちがバタバタとしていた。なんとなく、脅迫するような雰囲気ではなくて気がそがれる。
 雑にザントの私室に通される。
 ザントは満面の笑みで私を迎え入れた。


「ベルンちゃん、良く来たね!」
「あなたが呼んだからでしょう」

 イラっとして答えれば、まぁまぁなんてヘラヘラしている。

「今日はベルンちゃんにお願いがあって来てもらったんだ」
「はぁ……」
「きょ、きょ、きょう、ま、ま、マレーネたんが、うちの夜会に、く来る。っていうか、夜会を開かされた、マレーネたん強引」
「ヨカッタデスネ」
「ヨ。ヨ。よくないっ! だって、無理、無理すぎる……。執事はノリノリだし、うち女主人居ないのに」
「ガンバッテクダサイ」

 棒読みで答えた。なんだ、なんで私が呼ばれるのか分からない。