夏休みの残りは、アイスベルクでウォルフと女騎馬隊の訓練をして過ごした。
 士官学校に戻る前に、一度タウンハウスへ戻る。
 タウンハウスの自室に戻ると、机の上に宛名も差出人もない白い封筒が置いてあった。
 不審に思って開けてみて、ぎょっとする。
 書き出しが、『マレーネたん すはすは』だったからだ。

 送り間違いだろ、っていうか、交換日記の上に手紙とか厚かましくないか? なんて思ったが、私の名前があってゾッとした。

- ベルンちゃんへ 誰にも秘密で一人で来るように 意味は分かるね -

 息が止まる。
 ザントからの脅迫状だ。
 指先が凍える。 

 相談する? 無視する? でも、だけど……。

 ザントの紫の瞳を思い出す。何を考えているか分からない瞳。
 お兄様は、信じて良いと言っていたけれど、私はまだ信じられない。

 私は手紙をグッと握りしめた。心を決める。
 
 行こう。行って相手の出方次第で、……最悪はぶちのめす、かなぁ?