【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


 この瓶をもって、人混みに紛れて湖まで歩く。皆、高揚した顔だ。
 湖の周りには屋台などはない。灯りも道筋に掲げられているだけで、暗闇が濃い。
 喧騒からの静寂で、思わず身が引き締まる。


 湖にの淵に近づく。今日は離宮に人が居ないから灯りがなく闇が引き立つ。
 湖面は真っ黒な天を映しとり、中にはキラキラと天の川が光る。まるで宇宙が地上に降りて来たような美しさだ。
 
「綺麗だ……」

 思わず漏らせば、シュテルが真面目な顔で頷いた。

「この星を持ち帰るんだよ。今夜だけはこの水は天の川の雫なんだ」

 湖の水を瓶に掬う。ガラスのふたでキュッと栓を占めて、ガラス瓶に星の雫を閉じ込めた。金の粒が水の中で揺らめく。
 後ろの人に順番を譲って、私たちは歩き出した。
 水を得た人々は、何やら湖畔にたむろしている。
 しかし、シュテルは先に行った。