音楽が途切れ、中央で踊っていた人たちの輪が崩れた。その輪の中から、マレーネ姫が現れてこちらにやって来た。今日がデビュタントだとは聞いていたけれど。
 
 目立ちたくないから、直接こっちに来ないで~!

「リーリエ様、今夜もとても美しいですね」

 にこやかに笑うマレーネ姫に、姉のリーリエがドレスをつまんで優雅に挨拶を返す。

「お招きいただきありがとうございます」
「ベルン様も。今日の演武も素晴らしかったですわ」
「お褒めにあずかり光栄でございます。マレーネ姫様」

 私も、表向きの顔で礼を返す。

「わたくし、紫の扇を誂えましたのよ!」

 元気いっぱいに報告されて、私は心の中で苦笑した。
 マレーネ姫は今年十五歳。そういう流行りの楽しみ方を積極的に取り入れる方なのだ。王女としては好奇心旺盛で活発。クルクルと変わる表情が愛らしい。