鏡の離宮は王都から急ぎの馬車で一日。ミルヒシュトラーゼの町にある。しかし、途中の町で一泊して、離宮に昼過ぎに着くようにした。氷を張るためだ。

 離宮は、湖の中心に建っている。
 白亜の宮殿が湖に反射して、湖のなかに、もう一つの城があるように見える。
 湖には橋がなく、渡るには舟が必要だ。管理を任されている使用人などは、舟を使って行き来する。

 しかし、王族は船を使わない。この国で最強の氷魔法の使い手、アイスベルクの者が湖を凍らせて、馬車を通すからだ。
 これにより、王家がアイスベルクを命を預けることを表し、アイスベルクは王家に恭順を示すのだ。

 過去に、王家とアイスベルクとの関係が悪かった時には、離宮に橋を架けたそうだ。その時の故事から、『離宮に橋を架ける』なんて言葉がこの国にはある。意味は、『愚かな争い』だ。
 両家の恥でもあり、忘れてはならない戒めの言葉でもある。