「そんなこと言わないでさ。卒業したら夏休みなんて一緒にとれなくなるんだよ?」
「ええ……やだよ」
「ベルン! お願い!」
「えー……やだ」
「だったら、アイスベルクに泊めてよ。僕、行ったことがないし、あそこならお忍びで行けでしょ」
「絶対ヤダ!! うちの領地は遊ぶようなところ何にもないし、もっと面倒」
「フェルゼンは狩に行くんだろ?」
「フェルゼンは王子様じゃないし、お忍びでもないし。ヴルカーンおじさまなら厩でも寝るだろうし」
「ベ~ル~ン~!」

 シュテルがしつこく食い下がらる。
 だって、旅行だなんて何かあってボロを出したら困る。アイスベルクを歩き回れば、子供たちから私が女だとばれてしまうかもしれない。
 絶対に無理だ。

「だったら、離宮に行けばいい」

 フェルゼンの提案に、シュテルが顔を輝かせた。