「アイスベルクはこの国で唯一私的な軍を持っている」
「ああ、騎馬隊か」

 シュテルの言葉にうなずく。

「だから、あまり権力に関わらない。軍事力だけで十分だろ? 外戚にでもなって、反旗を疑われるのも嫌だし、権力をもって担ぎ上げられのも困るから。国内で軍を二分にするなんておぞましい限りじゃないか。うちは領地さえ保証されていればそれ以上のものは望まない。危ない橋は渡らないんだ」
「危ない橋……」

 シュテルが呆然とする。
 フェルゼンがそれを聞いて、楽し気に笑った。

「王家もアイスベルクの前じゃ形無しだな。みんなが欲しがる王家の力すら、『危ない橋』呼ばわりだ」

 笑い声が広がる。それに伴って、もったいないという声も広がる。確かにマレーネ姫はみんなの憧れで、可愛らしい。だけど、それだけだ。