「ゴメン」
「……分かってました。私は先輩に相応しくない」
「そんなことないけど、私は誰とも付き合わないんだ。君のせいじゃないよ」
「誰とも? 女性ともですか?」
「うん。誰ともだ」
男のままでは、嘘をついたままでは、誰をも愛する資格がない。
「それが、先輩の寂しさなんですね」
「……きっと、そうだね」
独りで生きていく。
それでいいと思ってた。でも、どうしてなんだろう。なんだか最近はうまく考えられない。寂しいと思ってしまう。
「寂しい時に、先輩も同じだと思い出してもいいですか? 一人じゃないって思ってもいいですか?」
クラウトは微笑んだ。月の明かりが、彼の顔に影を作る。悲しい。



