「いえ、私が誰にも触れられたくないと思っただけです」

 月の光が木々の間から降ってくる。ザワザワと風が鳴る。

 クラウトは顔をあげて、私をじっと見た。

「あの瞬間、咄嗟に殿下を探していましたよね」
「!!」

 気が付かれていた。

「悔しいと思いました。近くにいる私じゃなくて、他の人を呼ぶことが悔しかった」

 息を飲んだ。緑色の瞳に月の明かりが反射してキラキラと光っている。美しい、だけど。

「ベルン先輩が好きです。人に言える意味ではなくて」

 真剣な目が怖くて、視線を反らす。