「クラウト、君は警護から外して貰えば良かったのに」
「いえ、私がこちらを希望したのです」
「せっかく家族と王女との晩餐なのに仕事熱心だね。君の家は王家と親交が深いと聞いているよ」
「……恥ずかしいことですが、父や兄は王家の方々と親密な話ができます。でも、私は無理なので疎外感を感じてしまって……。少し寂しく思うんです。情けないことです」

 遠くを見ながら話すクラウトが、いつもより弱々しく見えた。

「ああ、わかる気がするな。私もそうだよ」
「先輩がですか?」

 どんなに仲が良くても、幼馴染みでも、やっぱり男の気持ちはわからない。女の子を好きになる気持ちだとか、逆に女子に対する反感だとか、理屈は分かっても共感は出来ない。

「うん、どうしようもないけどね。ちょっと寂しいよね」
「意外です。悩みなんてないと思っていたから」
「そんなことないよ。弱いしカッコ悪いんだ。……今日も助けてくれてありがとう」

 クラウトは目を大きく見開いて、息を飲んだ。夜目にもわかるほど、顔が赤い。