マレーネ姫のたっての願いで、魔道士ザントと面会することになった。ザントはヴルツェル侯爵家の牢屋に、魔法封じの法具を付けられ閉じ込められていた。
 牢越しに対峙する私の背に、マレーネ姫がくっついて様子をうかがっている。

「ひぃぃぃっ、マレーネたん 無理、むりぃ。ごめんなさい、眩しい。生きててすいません」

 雄たけびを上げて、ザントがマレーネ姫から後ずさり、壁に張り付く。
 意味不明である。
 キモイ。

 私の背中越しに、マレーネ姫が話しかける。

「あの、ザントさま」
「いや無理、名前知ってるとか、無理、死ねるぅぅ」
「姫様話になりません、行きましょう」

 私は振りかえって、姫の肩を掴み帰るように促す。