小さな男の子がトコトコと歩いてきて、マレーネ姫に小さな花束を差し出した。
 さすがにそのまま受け取るわけにはいかず、私がそれを改める。
 不審な物がなかったので、マレーネ姫様に直接手渡せるように、小さな子供を抱き上げた。

「ひめさま どうぞ」

 可愛らしい舌足らずの言葉で、必死に手を伸ばして花束を渡そうとする。

「こら、だめよ!」

 子供の母親らしき人物が恐縮するのを、私が目で留める。
 
「ありがとう」

 姫はにっこりと笑って、花束を受け取った。男の子は顔を真っ赤にしながらも、満足そうだ。私は男の子をそっと下した。
 男の子はスキップして母親のもとに帰り、母親は何度も頭を下げた。