「ベルン。お前殿下のオイルをなぜ知っている?」
「傷が背中なので私が塗っていたからですが?」
「士官学校にだって衛生兵がいただろう」
「騎士が背中の傷など見せたくないでしょう? 私のつけた傷ですし、私が見るのは当然です」

 っていうか、この話何回すればいいんだ!

 リーリエお姉様は、お兄様に圧力をかけるように氷のほほ笑みで制する。
 エルフェンお兄様はムッツリと黙って腕組みをした。静かにチェスのボードを睨みつけている。


「ベルンは殿下が大切なのね?」

 お姉様は、氷山のように染み入る水色の瞳で私を見た。

「ええ、大切です」

 それは間違いなく言い切れる。私はシュテルが大切だ。許されるまでは側にいたいし、側にいられなくなっても力になれる何かではありたい。
 
「そう、だったら王都にいられる努力はしなくてはいけないわね」
「な!」

 エルフェンお兄様が声を上げれば、お姉様が笑った。

「チェックメイトよ、お兄様」

 お兄様のキングを倒してリーリエお姉様が意味深に微笑めば、エルフェンお兄様は大きくため息をついた。

「負けたよ、リーリエ」