夢みたいな話だと思う。アイスベルク家にはそんな権力はないし、あったとしても、周りが受け入れないと思う。
 か弱きレディーを守ることそこそナイトであり、騎士道、なのだ。

「それより私はね、ベルンに聞きたいことがあったの」
「なんでしょう?」
「シュテルンヒェン殿下のことよ」

 唐突にシュテルの名前が出て、心臓が跳ねる。顔が熱くなる。
 それを見てお姉様が楽しげに笑った。

「あれから傷の方はいかがかしら?」
「すっかり良くなっています」
「心配していたの。マレーネ姫から相談を受けて、オイルをお分けしたのだけれど」
「あれはお姉様のオイルだったんですか?」
「ええ。というよりも、私が小さかったあなたのために作ったオイルよ。覚えていない? ベルンはしょっちゅう怪我をしてきたから。女の子に傷があってはいけないでしょう?」
「それで、あんなに懐かしかったんだ……」

 呟けば、ピクリとエルフェンお兄様の眉が上がった。