「ベルンは『宵闇の騎士様』だから、絶対に上がってくるんだと思ってた」
「お兄様まで! やめてください」
身内に二つ名を呼ばれるなんて、恥ずかしくなってしまう。
「ベルンは騎士になるべきだけどね」
「ええ、アイスベルクのように女騎士があればいいんですけど」
そう答えれば、お兄様はお姉様の顔を見た。
お姉様はニッコリと笑って、私を見る。
「ベルンの言うとおりね。王都に女騎士団があればいいのよね。昔の文献では、北の山脈の向こうにリリトゥという男子だけに魔法をかけるモンスターがいたそうよ。そういうモンスターを退治するには女騎士が必要だもの」
お姉様は駒を盤に置きながら何でもないように言った。
その言葉に、私は曖昧に笑う。



