桑の実のジャムのようになった、宵闇の空。

 もう家の前までついてしまった。

「宵闇の騎士様だっけ」

 ウォルフが小さく笑った。

「笑わないでよ」
「……楽しかったか?」
「楽しかったよ、ありがとう、ウォルフ」

 礼を言えば、ウォルフは照れたように頬を掻いた。すっと目をそらして、もう一度私を見つめる。黒い瞳の意志が強い。

「なぁ……、戻って来いよ」
「……」
「オレはお前を待ってるよ」

 答えあぐねていると、ウォルフはまるで話なんかなかったかのように、ニッカリと歯を見せて悪戯っぽく笑った。