【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「でも、ベルン。嫌なら逃げないとダメだよ。僕に限らず、こんなに中に入ってきたら、期待しちゃうから」

 嫌? 嫌ではない。困るけど。

 だって、私は女だし、それがバレるわけにはいかないし、それを黙って嘘ついて。

 
 そうだ、私はずっとシュテルを騙してきた。自分を偽ってきた。
 本当の自分を見せてないのに、好きだなんて言ってもらえる資格はない。
 唇を噛んで俯く。

「ゴメン、気を付ける」
「僕が嫌い?」
「ズルい聞き方しないでよ、そんなわけないだろ」
「そうだね」

 シュテルは笑う。本当にズルい。確信犯だ。

「でも気持ちには応えられない」
「やっぱりフェルゼン? それともあの騎馬隊長? 白百合のお茶会に誰かいるの?」

 なんで、フェルゼンやウォルフの名前が出てくるんだろう。