「でも、ベルン。嫌なら逃げないとダメだよ。僕に限らず、こんなに中に入ってきたら、期待しちゃうから」
嫌? 嫌ではない。困るけど。
だって、私は女だし、それがバレるわけにはいかないし、それを黙って嘘ついて。
そうだ、私はずっとシュテルを騙してきた。自分を偽ってきた。
本当の自分を見せてないのに、好きだなんて言ってもらえる資格はない。
唇を噛んで俯く。
「ゴメン、気を付ける」
「僕が嫌い?」
「ズルい聞き方しないでよ、そんなわけないだろ」
「そうだね」
シュテルは笑う。本当にズルい。確信犯だ。
「でも気持ちには応えられない」
「やっぱりフェルゼン? それともあの騎馬隊長? 白百合のお茶会に誰かいるの?」
なんで、フェルゼンやウォルフの名前が出てくるんだろう。



