ベルン様を庇って受けた背中の傷は重症で、治療のために騎馬隊本営に連れ帰った。重症ということや、王子ということもあり、特設のテントを用意した。予断を許さない状況で、ベルン様が付きっ切りで看病をした。
その様子を見れば、この王子がベルン様にとって、ただの騎士団仲間ではないことが想像できた。
ベルン様だったら、誰にでも等しくそうしたかもしれないが。あの取り乱しようは並ではなかった。
あのベルン様が泣いていた。
めったに泣くことのないベルン様を泣かせた。
オレは激しく嫉妬した。
図々しくもベルン様の御手を煩わす男に。
弱ったふりをして、必要以上に触れる男に。
ベルン様を男だと思いながらも、欲しがる男に嫉妬した。
だって、不幸にしかならないではないか。
領地に戻ってさえ来れば、ベルン様はありのままで生きていける。
騎士の格好でいようとも、淑女のドレスを纏おうとも、誰も何も言わない。
だけど、コイツがベルン様を拘束するのなら、彼女はずっと男と偽り続けなければいけないのだ。
それは、結ばれないことを意味する。男としても、女としても、幸せになれない。