アイスベルク領は昔から名馬の産地として有名で、私たちも馬を育て暮らしてきた。お父様は一年のほとんどを領地で過ごしているため、ひきこもり侯爵なんて呼ばれていると、お兄様がこっそり教えてくれたこともある。もともとは騎馬民族だった名残なのか、基本的に家族みんなが自由人だ。

 貴族の娘として基本的な振る舞いや所作などは教えられ、時と場所によってはそのように振る舞うように躾けられては来たけれど、領地内でそのように振る舞う必要はなかった。
 そもそも、この領地には貴族なんて私の親族しかいないからお高く留まっても意味ないし、領地の人たちだってみんな騎馬民族の末裔だから、基本実力主義なのだ。

 馬も乗れないようなガキんちょは、領主の娘なんて理由だけで一人前の扱いは受けない、世知辛い。