【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「スノウ」

 男の子はそう馬に呼び掛けた。言葉の意味は分からなかった。
 馬が嬉しそうに鼻を鳴らして、鼻先を男の子に寄せた。

「触ってみる?」

 唐突に言われて僕は驚いた。

「だいじょうぶ?」

 おずおずと尋ねる。だって、父上の馬も兄上の馬も、僕には触られたくないとあからさまに態度で示していたからだ。

「スノウ、この子が触ってもいい?」

 男の子は馬に確認した。馬は優しい目で僕を見て、頭を低く下げた。

「触ってもいいって」

 僕はおっかなビックリ手を伸ばす。

「そう、ゆっくり優しくね」

 ウィスパーボイスが僕の耳をくすぐった。

「ゆっくり、やさしく」