「スノウ」
男の子はそう馬に呼び掛けた。言葉の意味は分からなかった。
馬が嬉しそうに鼻を鳴らして、鼻先を男の子に寄せた。
「触ってみる?」
唐突に言われて僕は驚いた。
「だいじょうぶ?」
おずおずと尋ねる。だって、父上の馬も兄上の馬も、僕には触られたくないとあからさまに態度で示していたからだ。
「スノウ、この子が触ってもいい?」
男の子は馬に確認した。馬は優しい目で僕を見て、頭を低く下げた。
「触ってもいいって」
僕はおっかなビックリ手を伸ばす。
「そう、ゆっくり優しくね」
ウィスパーボイスが僕の耳をくすぐった。
「ゆっくり、やさしく」



