怪我をした僕は、アイスベルクの本営に担ぎ込まれた。馬上でずっと励まし続けるベルンの声と、冷やしてくれる魔法に揺られて、痛み以上の幸せを感じていた。
 アイスベルクのテントは簡素なものだけれど、防御魔法は一流で医者の技術も目を見張るものだった。
 サラマンダーの傷は酷いものだったが、的確な治療のおかげでみるみる回復した。つきっきりのベルンの看病のおかげが大きいと思う。

 必死で僕の無事を願うベルンの姿に心が震えた。
 こんなにベルンの中に自分がいるとは思っていなかったからだ。
 何時でも冷静沈着で、熊を相手にしたって取り乱したりしないのに、あの一瞬は嘘みたいだった。痛み以上の多幸感が押し寄せてきて、息もできないほどの傷に感謝すらした僕は可笑しいだろうか。
 一瞬だけど、死んでもいいと思ったのだ。