テントの外をポンポンと叩くが響いた。

 ハッとしてシュテルが顔を上げ、その隙を狙って私も起き上がる。

「準備できたか?」

 外からウォルフの声が響いた。

「ああ、いつもの邪魔者だ」

 シュテルが悪態をつく。なぜだかシュテルはウォルフがテントの中にいることを快く思っていないらしい。

「あと少し」

 答えれば、分かったと返ってくる。
 振り向けばシュテルは何もなかったように上着の袖に手を通していた。
 私はホッとして肩の力を抜いた。


 その後、士官学校までアイスベルクの騎馬隊が送ってくれた。中には女騎兵も混ざっている。
 宿舎からは、有名な騎馬隊を見るべく顔を出している学生がたくさんいた。興奮と、初めて見る女騎兵にどよめく声。

 ウォルフはそれを見て苦笑いする。

「ベルン様、もっと領地に帰って来いよ。レインの足ならひとっ飛びだろ? こいつらも待ってる」

 女騎兵の少女たちがにっこりと笑った。

「ベルン様にもっといろいろ教えていただきたいのです」
「うん、そうだね、そうするよ」

 ウォルフと拳を打ち合わせれば、宿舎の窓がワッと沸いた。