「僕以外にそんなこと言わないで」

 切ない声だ。胸が締め付けられる。

 こんな気持ち知らない。

 せつなげに眉を寄せて唇を指でなぞるから、慌てて顔をそむける。

 こんなシュテル知らない。
 
「お願いだから」

 どうしたらいいのか分からない。心臓がバクバクと鳴る。

 私は逃げ出したくて、でも逃げ出せなくて、ただひたすらに視線を逸らす。

「ねぇ、ベルン」

 甘い声が耳の中に絡みつく。もう身動きも取れなくなる。なんの魔法なんだろう。おかしくなる。こんなの絶対おかしいのに。
 シュテルは優秀だから、私の知らない魔法を使ってるにちがいない。金属性に水属性の氷は弱い。きっと体の中の金属をコントロールされているとしか思えない。

 そうでないなら、なんで抵抗出来なくなってしまうのか分からない。