【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「ちょっと! 痛いよ!」
「……ベルン」

 シュテルの背中が波打つ。

「なに?」
「帰ってからもこうしてくれない?」
「なにが?」
「僕の部屋で包帯を巻いて欲しい」
「もちろんだ」

 何を言ってるんだ。当たり前だろう。

「シュテルの怪我が治るまで私が責任を持つよ」

 さらにギュッと手を引っ張られ、顔がひしゃげるから、シュテルの肩に顔をのせた。

「シュテル?」

 どうしたのだろうか? 不安なのだろうか。やっぱり背中の傷は、騎士にとって苦しい傷だ。
 シュテルの背中の傷跡に飽いた手で触れる。少しでも良くなって欲しいから、氷の魔法で思いを込める。
 シュテルの背中がビクリと震えた。

「冷たかった?」
「違う」

 ならば。これだけは謝らせてほしい。