「ベルンがいなくてはサラマンダーに反撃できない。だから僕は君を守った。君さえ無事なら、怪我をしても助けてもらえる。退避できると計算した。全て僕の判断で、君を利用した。想定通りサラマンダーは撃退したし、僕も助かった。ベルンは謝ることなんかない」
シュテルはきっぱりと言い切る。
ああ、確かにそうだ。冷静に考えればそうだ。
でもやっぱり違う。シュテルは氷の魔法を持つ騎士を守ったと言いながら、私がたとえ氷の魔法を持たなくても見捨てる人じゃないと知っている。今の私を楽にしてくれているだけだ。
シュテルはすごい。頭も良くて冷静で、それなのに思いやりもあって。
「すごいね、シュテル」
そう言えば、シュテルは満足げに笑った。
「少しは見直した?」
「君がすごいのは前から知ってるけどね」
「本当?」
「いろいろありがとう」
言葉にはできないけれど、たくさんのありがとうだ。サラマンダーを倒してくれて、アイスベルクを守ってくれて、私の体を守ってくれて、心さえ楽にしてくれる。
ゴメン、もう一度言いそうになって口を噤む。
そんな言葉シュテルは望んでないからだ。
シュテルは優しく微笑んだ。



