ウォルフは私の横に腰かけた。
 そして、胸ポケットから、クルミ入りのクッキーを取り出して手渡してくれる。真ん中には四葉のクローバー形の窪みがある。

「食えよ」
「……ありがとう」

 懐かしい味。ウォルフの母のクッキーの味だ。素朴で、甘さの中に少しの塩分と、ゴロゴロ入ったクルミはきっとこの森のものだ。幼いころからよく分けて貰っていた。

「なぁ、弱いから守るのか? 弱いから心配するのか?」

 ウォルフが尋ねる。

「……え?」

 意味が分からずに尋ねかえす。

「お前は、殿下が弱いと思うから心配しているのか? 騎士団が弱いと思ったからしんがりを務めたのか?」
「そんなわけない!」
「だろ? オレのおふくろは今だにオレを心配するぞ。オレは一応勇猛果敢なアイスベルク騎馬隊の隊長だぜ?」

 ウォルフはクッキーを咥えた。