【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)


「ベルン!」
「シュテル!」

 抑えきれない!

 そう思った瞬間、シュテルのマントに抱き込められた。シュテルを越えて炎が舞う。熱い。
 たくさんの矢が頭上を通過する。サラマンダーはそれを見て怯む。


「ベルン様か!」

 馬の嘶きが響く。
 顔を上げれば、そこにはアイスベルクの騎馬隊がいた。すでに小物は一掃されている。
 先頭に立つ黒髪の騎士は懐かしい幼馴染だ。筋骨隆々とした騎士らしい体躯に、黒く鋭いまなざし。アイスベルクの騎馬隊と言えば、この人の名を知らないものはいない。

「ウォルフ!!」

 懐かしい顔に、安堵の声が漏れる。ウォルフはヒラリと馬から降り、剣を抜いて私の側に駆け寄った。