「そんなの、イヤだ。変だ」

 声を絞り出して、睨みつける。

「僕じゃ気に入らない?」

 シュテルは指を止めて、目を細め冷たく微笑んで見せた。

 天使の風貌でどんだけ悪魔なんだ!

「そうじゃない。私がそんなことでシュテルを利用すると思ってるのか。見くびらないで欲しい」

 そんなことしたら、フェアな友達でいられなくなる。今後だって宿営はあるのだ。自分の身は自分で守る。他の皆もそうしているのに、自分だけ嘘ついて甘えるなんて変だ。

 シュテルは体をこわばらせた。そしてそっと手を引く。

「ゴメン。そういうつもりじゃなかった」
「わかってる、なんかわかんないけど、心配してくれてるんでしょ? それは嬉しい」
「……こういう場所は、瘴気にあてられて変になる奴がいるんだ。ベルンに嫌な目にあって欲しくない。そのためになら利用して欲しいと思った」

 ションボリとするシュテルを見て、私はため息をついた。