宿営地について、準備を始める。もう空は夕焼けに染まっていた。
 今回の宿営地は、アイスベルクと王都の間に跨る森だ。私の庭でもあるその森だが、実はモンスターの出現率は案外高い。フェルゼンなどは気さくにあの森を通ってくるが、それは力があるからこそだ。慣れないものは護衛をつける。そもそも、アイスベルクは田舎だし、それほど重要な地でもないため、商人ぐらいしか行き来はしないのだ。
 だからこそ、アイスベルクがあるともいえる。王都とアイスベルク両側から管理するのだ。その為、アイスベルクは騎馬隊という名の私的な騎士団を持つことが例外的に認められているのである。

 一番下っ端の、士官学校のチームがテントを張る仕事と薪集めを命じられる。テントグループと、薪などを調達するグループの半分に分かれる。
 私は森に詳しいということで、自動的に薪を調達するグループに指名された。

「だったら、僕も森へ行こう」

 シュテルが立候補すれば、フェルゼンも手を上げる。

「ベルンほどじゃないが、俺もこの森に詳しいからな」

 張り合うように睨みあう二人に、リーダーがため息をつく。

「二年全員で行かれると困る。フェルゼンは残れ、あと一人は一年からだ」
「私が行きます!」

 名乗りを上げたのは、先ほど嫌味を繰り出してきた一年生のクラウトだ。

 うわぁ。メンドクサイ……。私が嫌いなら来なきゃいいのに。私が嫌いよりシュテルが好きが勝ったか、そうか。

 私はため息を飲み込んだ。クラウトの面倒はシュテルに任せよう。