微温的ストレイシープ



「やっぱりね」


ユキノさんはわかっていたみたい。


廉士さんもなにかが引っかかるのか、考え込んでいるようだった。

そして、




「なあ、お前の記憶。1時間おきに戻ってねーか」

「へ?……そういえば」



一つ目の記憶は、廉士さんと出会ったときに思い出した。

たしかあのとき時間を聞いたら『もうすこしで24時』だって言ってたよね。

たぶん、二つ目の記憶もその1時間後くらいだった気がする。


いまも……



「2時ちょうど、ですね」



わたしの記憶が戻ってくるのは、1時間おき。

その可能性はかなり高かった。





「ねえ、このケーキちょっと甘すぎない?」


ユキノさんはさっきからフォークが進んでいない。

どうやらものすごく甘く感じるんだそうで、うへぇと舌を出していた。



そうかな?

わたしはこのくらいでちょうどよかった。


首をかしげながらもう一口、ケーキを口に運ぼうとすると。


横から伸びてきた手につかまれ、意図してない方向に手首を持っていかれる。





「……そうか?言うほど甘ったるくはねーけど」


隣にいた廉士さんが、わたしの手からケーキを食べた。