いただきます、と手を合わせてフォークでケーキを切り分けて口に運ぶ。
ちょうどいい甘さのふんわりした食感が広がった。
「おいしいです」
「よかった。あ、ちょうど2時のおやつだね」
カロリーヤバそうだなーとは言いつつも、ユキノさんもケーキを一口。
もう2時なのか、と時計を見上げる。
正確には、見上げようとした。
「……っ、」
また、だ。
何度なっても慣れない痛み。
頭を押さえてぎゅっと目をつぶってみても、痛みが改善されることはなかった。
でも……以前に比べたら和らいできているのか、声を上げるほどではない。
流れ込んできたひとつの記憶。
「……あ、」
あまりショックは受けなかった。
たぶん現実味がないということもあるのかもしれない。
名前や顔は思い出せない、
ただ、その事実だけが頭のなかに記憶として形を作られる。
「榛名?」
「……廉士さん、わたし……」
────両親はもう、生きていないです。
三つめの記憶が戻ってきた。



