ここでも思い出せなかったのは、なんでだろう。 もしかしたら、まだ記憶を失いつつあるのかもしれない。 そんな考えを一瞬にして打ち払った。 たぶん、混乱してるだけ。 廉士さんはわたしにかまわず、 でもさっきは違う、と言った。 「身を小さくして怯えてても…… 目だけはしっかり開いてた」 ナイフの先から、絶対に目をそらさなかったんだよ。 すこしの揺らぎも、迷いもない声だった。