微温的ストレイシープ



「……わからない」



そう言うだけでせいいっぱいだった。



廉士さんの視線から逃れるように、身体を隠す。

ずっとそのままにしていたワンピースをやっと、直しはじめた。




虐待。


もしそうだとしたら。

わたしは本当に、警察に行ってもいいの?

見つかってもいいの?


もしかして……






──────逃げてきたんじゃ、ないの?




「両親のことはわかんねーの」


ふるふると、動作だけで返した。


思い出せたのは、名前も、性格もわからない兄。

記憶のなかでわたしに笑いかけていた、ふたりの兄だけだった。




「……お前さ。さっき、殴られたとき。自分がどうしたか覚えてる?」


覚えてない。

さっきは必死だったから、思い出せなかった。



「最初、変なやつらに捕まりそうになったときも。虎牙に襲われそうになったときも。お前は目をつぶってた」




……そう、だったっけ。