微温的ストレイシープ




わたしはしばらくの間なにも話すことができなかった。


鎖骨、胸、腰、太もも。

大小さまざまなそれは、だれがどう考えたって異常そのもの。


“一般人”がこしらえるような痣の量じゃない。





「……なんで気づかなかったんだろう」


服から出ているところにも、ないわけじゃなかった。

うっすらとだけど、腕や足首にも見つけてしまう。



ふいに廉士さんがわたしの背中側にまわったかと思えば、かすかに息を呑む音が聞こえた。

たぶん、あったんだ。そこにも。




「……痛むか?」

「いえっ……痛みは、ないです」


自分で触れてみても、つよく押してみても。

幸いにも響くような痛みは感じられなかった。

もしかしたら、見た目より酷くはないのかもしれない。



「……大丈夫ですよ!これくらい、なんともありませんから」




「お前も薄々気づいてんじゃねーのか」



たとえ廉士さんのいうとおりだったとしても、聞こえないふりをするしかなかった。


だって、そうするしかないじゃん。

ここで認めてしまえば、そうだ、って肯定してしまえば。






「……虐待、だろ」


もう前にも後ろにも進めなくなってしまうのに。