その全部に表情がなくて、本当に同じ人間なのかと疑ってしまうほど。
「おいハルカ!」
「えっハル……」
「自分の身は自分で守れ!わかったな?」
「ぅ、ええ……は、はいっ!」
ナイフを持った男を相手している廉士さんは、
文字どおり手が離せない状態だった。
そして彼の間違いに訂正を入れる余裕もなく。
地面にふっと影が落ちてきて、わたしはあわてて身をよじる。
直後、わたしのいた場所に強烈な蹴りが落とされた。
かんいっぱつ。
食らっていたらたぶん、しばらく起き上がれないくらいの威力。
わたしが女だからか、それとも弱そうだからか。
ナイフは出されていなかったけど……
「悪いようにはしない。大人しくしてろ」
その言葉がでまかせだってことぐらい。
感情のない彼らから、やすやすと伝わってくる。
「い、いやですっ……」
捕まったら最後。絶対、殺される。
頭のなかにあるのは、虎牙さんのお腹に巻かれた包帯だった。



