どしゃっと顔から地面にスライディングするのと同時、頭上から何かがぶつかる音がした。




さすがにこの仕打ちはないと思う。

絶対わたしのことが嫌いなんだ。




「いった……ちょっと、廉士さ────」



涙目できっと顔を上げた。



でも、わたしの目に入ってきたのは想像していたものじゃなかった。








「俺もいろんな奴に狙われてんだ」



目が泳ぐって、本当はこういうことを言うんじゃないのかな。


右から、左。

わたしの視線がぐるりと泳いだ。


5人?いや、もっといる。



さっきまでわたしが立っていた場所には廉士さんと……知らない男の人がいて。

はたから見れば、至近距離でなにかを話しているみたいだったけど。



廉士さんの右手はその人の手首をつかんでいる。


そして、そのほんの数センチ先でぎらりと反射する鋭利なもの。





「こんな風に、な」



見上げた背中はもう、わたしをふりかえることはない。