『暴走族』
驚きはしたけど、そこまで動揺することもなかった。
たとえ廉士さんたちが暴走族だったとしても、わたしにとってはさっきのチンピラたちのほうがよっぽど怖かったから。
シノブさんに代わって、維月さんがマルバスのことについて詳しく教えてくれた。
レンレンの女だから知る権利はあるよね、って。
わたし、廉士さんの女じゃないんだけどな。
訂正することもできたけど、わざわざすることもなかったので黙っておいた。
マルバス、それが廉士さんたちが所属する暴走族の名前。
ここら辺でいちばん強いチームであり、それゆえこの町で知らない人はいないんだとか。
だから廉士さん、自分のことを知らなかったわたしに驚いたんだ。
そんな彼がどうやらここ、マルバスの総長らしく。
あんなに面倒くさがりな人が?
と目をしばたかせたら、
遠く離れていたはずの廉士さんから「何か文句でも?」という声が飛んできた。
「うちの総長、地獄耳だから」
そのとなりで当麻さんが苦笑している。
彼は副長らしいけど、穏やかで優しそうでわたしは好きだった。



