はじめからそのつもりだ、って。
すっとよく通る低い声は、そう言っているようだった。
わたしはわかってしまった。
廉士さんはほんとうに自分の身を守る気がない。
たとえ自分は助からなくても、
……わたしを守ろうとしてくれている。
「……わからないです、廉士さん」
「あ?」
「なんでそこまでしてくれるんですか?わたしなんかのために」
「お前だからだよ」
「てめぇら、かかれ!」
シュトリの総長が冷たい空気を切り裂くような声をあげる。
何十にも重なる雄叫びのなかであっても、廉士さんの声だけははっきり聞き取ることができた。
「言っとくけど、俺がお前にかけてんのは情けでもエゴでもねぇからな」
「じゃあなに……?」
「だから、ちょっとは自分で考えろ」
ばさりと顔に押しつけられたのは、さっき返したばかりの上着。
戸惑うわたしに、邪魔だから着とけってぶっきらぼうに言ってのけた。
こんなことを場合じゃないのに。
わたしたちが話している間にも、どんどん押し寄せてきて。



