身体がありえないほどに灯里を欲していた。



俺たち兄弟にとって……いや、



この世界の狂った人間たちにとって、灯里はガソリンのような存在でもあり、麻薬のような存在でもある。


それがなくては動かない、それを摂取しなくては生きられなくなってしまった。


この世界には灯里が必要だというのに。





「兄貴!すこし落ち着け────」

「落ち着く?この状態で落ち着けるわけないでしょ、バカなんじゃないの?」



おかしいのはお前のほうだよ。


なんでそんなに落ち着いていられるんだ?

なんで、あきらめたような顔をしているんだ。



灯里は絶対この世界のどこかにいる。

見つけられないわけがない。





「おい、兄貴!」


後ろからそんな声が聞こえてきたが、かまわず走り出す。




はやく、はやく灯里を。



どこにいる?

どこに隠れている?


出ておいで灯里。



どこにいたって無駄だよ。

何度逃げ出したって意味ないよ。