そこまで思い出したところで、いったん水がせき止められるように記憶もストップした。


ちょうど息も切れてきたころ。


廉士さんにいま思い出したことを伝えようとしたときだった。




「……っえ、え、廉士さんっ!?」


いままで前を走っていた廉士さんの身体がぐらりと斜めに傾いて。

地面に倒れるよりさきに、すんでの所で受け止める。


というよりは地面と廉士さんの間に身体を差し込んだ。




「ふぐぅ」

「……わり」



押しつぶされて変な声が出たけど、廉士さんに怪我はなかったみたい。

すぐに上から退いてくれた廉士さんはそのまま近くの壁に背中を預けた。




「だ、大丈夫ですか?どこか痛むんですか?……っ、」



思い当たる節があった。

なんで気づかなかったんだろう。


馬鹿じゃないの、わたし。馬鹿だ。



さっき廉士さんが廃墟の前で一瞬止まったのは、足に違和感を覚えたから。