微温的ストレイシープ



「どうしよう……」



ぺたんと座り込んだまま窓の下を見つめる。


後ろからは絶えず音が鳴り響いていた。



そして次の瞬間、一際大きくなにかの倒れる音がして。


たぶんバリケードが破られたんだ。




「女しかいない。あいつはどこだ?」

「嬢ちゃん、やっと捕まえたぜ!」



なだれ込んでくる足音と、無機質だったり感情的だったりする声。

それらを一様に背に受けつつも、わたしはまだ判断することができずにいた。


一寸先は闇。

視界に張った薄い膜のむこうに広がるのは藍色に染まる闇だった。


わたしにこの中に飛び込んでいく勇気はない。



どんどん足音が近づいてくる。

そのときだった。






「──────榛名!」



はっとした。


闇のむこうから飛んできたのは彼の声。

無機質でも、感情的でもない……廉士さんの声だったから。