微温的ストレイシープ



「あのっ、もしわたしがなにかしたのなら謝ります!だからもう追いかけるのは止めてくれませんか!」

「なにか、だって?」



ドアをたたきつける音が止む。

しぃんとおとずれる静寂に、わたしの押さえる手もすこしだけ緩んだ。


そのとき。




キイキイと爪で引っ掻くような音が耳に届く。




「そうだ。俺たちはお前に何かをされた」

「っ……そ、のなにかを、教えてくれませんか?」




「教えて?教えるわけねーだろ。教えられるわけねーだろ?そんなこともわかんねーのかぁ!?ナア、おい!ここ開けろよ!いますぐここを開けろよォ!!!」



細々としていた引っ掻き音が、次第にがりがりと大きくなっていく。

そしてまた、ドンドンと強く叩かれ始めた。



まだ何かを言っていたけど、それはもう聞き取ることができないほどに不明瞭な内容で。



絶え間なく響く笑い声は、


……ありえないけど、人のものとは思えなかった。