微温的ストレイシープ



「っおい、なにすんだ」

「だって廉士さんが行こうとするから」

「置き去りにされるかもって?んなことしねーよ今さら」


「傷ついてほしくないんです。もうこれ以上、傷を増やさないで」



廉士さんの手のひらにあった、他の部分よりもすこし白くて浮き上がっている“何か”の跡。


その大きな手をぎゅうっと両手で包み込むようにして、まっすぐに目を見つめた。




「……おねがい」



返事はなかったけど、ただじっと目を向けられる。

何かを考えているようだった。


それでも辛抱強く目をそらさないでいたら、はあ、と今日何度目かのため息をもらった。




「で、どうやってここから出んの?俺らすでに袋の鼠だけど」

「え、」

「出口は1階だけ。その1階に通じる階段も、あそこだけ」



カンカン、もう隠そうとしないのか階段のほうから音が響く。




「どーする?」



ぐっと言葉につまったのは、まだ脱出する方法を考えられてなかったから。