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「あら?ねえ、あんた。灰皿どこやったの」

「しらねーよ。おまえがどっか持ってったんだろ」

「えーもう火つけちゃったんですけどぉ」



耳障りな声だった。


幼いながらに、目の前の奴らは人間としてなにかが駄目なのだと理解していた。




「れんしぃ、ちょっとおいで」



部屋のすみで膝を抱えていた俺を呼んだのは、人間の女の皮を被った化け物。

こういうときだけ俺を呼び、猫なで声で話しかけてくる。


なにをされるのかわかったうえで、断ることも許されないので無言で化け物────母親に近寄っていった。




「手、こうやって出して。下に落とさないようにね」



なにを、とは言わなかった。

俺もわざわざ聞くことはない。
わかりきったことだ。


水をすくうように両手を前に出す。



すぐに、手の上にぱらぱらと灰色の粉が落ちてきた。


これだけなら別に熱くはない。まだ我慢できる。

が、たまに落ちてくる燃えカスはすこしばかり熱かった。